マラソン大会に出たい。

「本気出す!」と宣言してからウォーキングも3日目。
そして、5.6キロ走る大会まで、2ヶ月を切った。

 

2年前、突然「フルマラソンに出よう!」と思い立ち、自己流で細々と走る練習をしてほぼぶっつけで本番に臨んだが、現実は甘くなかった。
ほとんどのマラソンにはいわゆる「関門」があり、制限時間内にそこをクリアしなければそこで止められてしまう。ハワイマラソンのように「何時間かかっても完走」みたいな大会はまずない、といっていい。

たいした運動もしたことがないくせに、初めてのラン大会がフルマラソンだったのだから、そりゃ無謀である。言い訳大魔王なのでいくらでも「だって」「でも」はあるのだが、いずれにしても、まだまだフルなど走れる準備はできていなかったのだ。練習も足りなさすぎた。

それでも、そこまでだろうと思っていた最初の関門4.6キロをクリアしてしまった。周りの雰囲気にも助けられたかもしれない。一定速度で走る方についていったり、急な跨線橋では体力温存のために歩いたり、何とか前に進み続けた。

 

最初のエイドにバナナを発見したときには「ああ!これが!」と感動したが、タイム的にはバナナを取るヒマもない。沿道の声援にも励まされて何とか足を進めたが、次のエイド(おまんじゅう)の目の前を大きな白い布が横切って「ここまで」を告げられたときは、口惜しいのと、やっと休憩できるというのとでしばし呆然としてしまった。
その距離、20キロ弱。なんだ、半分も来ていないじゃないか。

そのまま、関門を通過できなかった他の残念組と一緒に、沿道に待機していたバスに順次乗せられた。これがまた、ウルトラクイズの「敗者のバス」を彷彿とさせる(ネタ古い)。ひとり1本スポーツドリンクが配られる。バスの中は、疲れとやるせなさでお通夜のようであった。実際、競技場に到着時車椅子を呼ぶぐらいに足を痛めておられる方もいて、それは気の毒だった。
うん、しばらく走るのはいいかなあ、とまで思った(筋肉痛も酷かったし)。

 

次の年、あと3分で完走を逃した夫がリベンジを期して応募したが、落選。かわりに小さな地方の大会に出よう、ということになった。夫は10キロ、自分は5キロ。小さな街なので沿道に人はおらず、海を見ながららっきょう畑のアップダウンを延々と走る自分との闘いだったが、何とか完走してらっきょうと完走証をもらう。この完走証が嬉しかった。

 

やり遂げた! 5キロだけど!
ドベから数えたほうが早いけど!
らっきょうももらった!

 

調子に乗って、数ヶ月後また別の地方大会にエントリー。今度も同じく5キロだが、ちょっとだけタイムが伸びたのも嬉しかったし、順位の飛び賞に当たって地元のお菓子をいろいろもらえたのも楽しかった。
いや、もしかしてこれってクセになるんじゃないの?

 

それから季節は巡り、去年落選したマラソンに今年は当選した。
ただし、今回自分は無理をせず短いほうの5.6キロを走る。
この夏、体調を激しく崩していて基礎体力はゼロ以下。本当に今更だが、ウォーキングからあらためてやり直して、何とか走れるように持っていきたい。「そんなんで間に合うのか?」
という疑問は心の奥にそっと沈めて、明日もがんばって歩こう。
そして、せめて好きなチームのユニフォームを着て、ちんたらでも完走できたら……次のステップに進めるだろうか。